「ロジカルシンキングの本を読んだけど身につかない…」。そんな悩みを解決してくれるアプリ連動の書籍を紹介します。

アプリで自分のロジカルシンキングをチェック

本を読んでロジカルシンキングを本格的に身につけるのは意外なほど難しいものです。これを乗り越えるアイデアに満ちた本が、生方先生のご著書「[練習問題アプリ付き]問題解決のためのロジカルシンキング」です。その名の通り、アプリやウェブで練習問題に取り組めるというもの。

さっそく会員登録して、アプリに取り組んでみました。下記のような問題が出てきて、自分が本で読んだことがちゃんと理解できているかどうかのチェックができます。

しかも、問題をこなしていくと自分の得意分野、不得意分野がレーダーチャートになって表れてくるというしくみもあります。現段階では問題数が3問と数少ないのですが、サイトの作りをみると、本書「問題解決のためのロジカルシンキング」以外の本も順次登録できるようで、今後の展開が楽しみ。


論理展開、分析力、因果関係、発想力、コミュ力をチェック

ちなみに、会員登録するためには当然のことながら本を買う必要があるので、やってみたい方はぜひゲットしてください。

ロジカルシンキングの心構え

では、本書の内容を見てみましょう。第1章「すべての仕事の基本は『ロジカルに考える』こと」では、主に心構えが説かれています。その中で特に重要と思えたのが、「ロジカルシンキングを実践するときの4つのポイント」です。具体的には、

  1. 正答ではなくよりよいアウトプット
  2. 1かゼロかという捉え方をしない
  3. 継続的なブラッシュアップ
  4. 具体的に考える

です。著者曰く「ロジカルシンキングを実践すれば、必ず正しい答えを導き出すことができる」というのは誤解とのこと。なぜならば、

学校での試験と違い、現実のビジネスシーンで、「正しい答え」というものはありません。つまり、ロジカルシンキングを実践したからといって、常に「正しい答え」が導き出せるわけではないのです。

とのこと(28p)。たしかに、正しい答えがあると思うと、そこにたどり着けないとき「ロジカルシンキングは難しい」、「自分には無理なんだ」と思ってしまうのは分かります。むしろ、機能の自分よりも少しでも上手に問題解決できる、上手にコミュニケーションできる、という、成長感でとらえるのがよいのかもしれません。

マトリクス分析には「名前」をつける

上記を踏まえ、問題解決の方法論が学べるのが第3章「速く、深く、的確に考えるためのツール」です。その中でも特に参考になったのが、第3節の「2つの軸でシンプルに全体像をつかむ」です。マトリクス、つまり縦横の軸でモノゴトを4つに分類する方法論です。たとえば、タイムマネジメントでよく使われる「アイゼンハワー・マトリクス」は、目の前の仕事(タスク)を「緊急度」と「重要度」の二つに分類するというものです。あるいは、ボストン・コンサルティング・グループが開発した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」は、会社が抱える事業を「成長率」と「相対的市場シェア」によって分類するというものです。いずれも、「モノゴトがどうなっているのか」を一目で速くするのに役立ちます。

このマトリクスに関して著者ならではのノウハウが、「各象限にタイトルをつける」というところ。

実際にマトリクスを作成する際に必ず必要になるわけではありませんが、そのマトリクスが使えるものになっているかを確認する意味でも、それぞれの象限にどんなタイトルがつけられるかを考えてみると、よりそのマトリクスの意味が見えてきます。安易に軸を決めたりした場合、2つか3つの象限のタイトルは簡単につくのに、残りの象限のタイトルが思い浮かばない、といったことが起こりがちです。そうしたマトリクスは頭の中ではよさそうに見えても、実際には使いにくいものだったり現実に即していないものの可能性が高いと言えます。

確かにいわれてみれば、上記で紹介したPPMも、「花形」(成長率も高く、シェアも高い)、「金のなる木」(シェアは高いが成長率は低い)、「問題児」(成長率が高いがシェアが低い)、「負け犬」(成長率も低く、シェアも低い)、というキャッチーなネーミングがついています。

ピラミッド・ストラクチャーの二つのアプローチ

本書のタイトルには「問題解決のための」と入っていますが、内容的にはコミュニケーションにも触れられていて、それが解説されているのが第4章の「ロジカルに伝える技術」です。ここで特に参考になるのが、ピラミッド・ストラクチャーの二つの使い方が併記されているところです。

  • 第3節「トップダウンのピラミッド・ストラクチャー」
  • 第4節「ボトムアップのピラミッド・ストラクチャー」

がそれです。実はこの二つには違いがあり、トップダウンにおいては、

  1. 思いついた根拠の列挙
  2. 根拠のグルーピング
  3. 根拠の修正
  4. 全体の整合性チェック

という順で進めていくのが正しいアプローチ。一方でボトムアップの場合、

  1. 出そうとしている結論のイメージをつかむ
  2. 手元にある情報のグルーピング
  3. メッセージの抽出
  4. 全体の整合性確認

と進みます。この二つを使い分けると、たしかによりよいコミュニケーションができると感じました。

ストーリーはできないロジカルシンキング

一方で、やや物足りないと感じたところが、「『内容』+『手段』で説得の流れを作る」というパートです。ここで述べられている、ストーリーを作るということ自体は納得です。ただ、そのアプローチとして述べられている、

  1. 伝えたい内容の優先順位づけ
  2. どの程度の内容を伝えられるか把握
  3. 伝えたい内容の順序の決定
  4. 伝える内容の修正

というのは、あまりにもザックリしすぎていて、実務においてどう活かすかがピンときませんでした。ここら辺は、著者の問題というよりも、そもそもロジカルシンキングの限界なのかもしれません。

画像はアマゾンさんからお借りしました

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