最近のAI(人工知能)や統計学のブームで数学の重要性が見直されています。ただ、「やっぱ苦手なんだよなぁ~」という人、多いですよね。そんな人が思わず手にとってしまうかもしれないのが西成活裕先生のご著書「東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!」です。
西成先生曰く、
数学をがんばれば多段階思考力が鍛えられるので、国語の読解力も間違いなく上がりますよ。
とのこと。ようするにロジカルシンキングの力が高まると言うことでしょう。そのココロは…
数学ができるとロジカルになる?
西成活裕先生は、これからの時代に必要な頭の良さを「思考体力」というキーワードで整理しています。これはさらに下記の6つの要素に細分化されます。
- 自己駆動力
- 多段思考力
- 疑い力
- 大局力
- 場合分け力
- ジャンプ力
数学は、この中でもとくに2番目の「多段思考力」を鍛えることにつながるので、冒頭の数学をがんばると国語のロジックを読み解くのも上手になるとのセリフにつながります。なお、多段思考力をもう少し詳しく言うと、
「AならB、BならC、CならD…」と、思考した結果をどんどん積み上げながら、答えが見つかるまで何段も諦めずに考え続ける力のこと
だそうです。
数学で養える6つの思考体力
他の要素も見てみましょう。1番目の「自己駆動力」は、思考のエンジンというたとえをしていますが、「知りたい」という気持ちです。著者の西成活裕先生は東大の先生でもあるので、授業の際にも
だから、いきなり授業に入るんじゃなくて、「数学って何のために勉強するのか?」みたいな目的をまず見せて、生徒たちが「ちょっとやってみようかな」と感じて自発的に始めてもらうことが大事
を実践されているそうです。
3番目の「疑い力」は、その名の通り自分の判断や答えを疑う力。ロジカルシンキングで言うと「クリティカル(批判的)・シンキング」に近いでしょうか。4番目の「大局力」は、物事を俯瞰してみる力のこと。6番目の「ジャンプ力」は、「閃き」。
多段思考を何度も何度も積み上げていってもたどり着かないことがある。そんなときに、「え?このやりかたで???」と突飛な発想をした結果、課題が会計津できることがあるんです。
と、いかにも数学者らしい言葉で説明されています。
数学ができると問題解決が上手になる?
もう一つ、5番目の「場合分け力」を考えてみましょう。これは西成活裕先生曰く、
複雑な課題で選択肢がいっぱいあるときに、正しく評価する力
と定義しています。数学の場合には、
何か問題があって、それをどの数学のツールを使うと早く解けそうかと判断するような場合に使います
とのこと。たとえば図形の問題で、対角を使うのか、錯覚を使うのか、それとも別に補助線が必要なのか、みたいなイメージでしょうか?
これ、実はビジネスの世界でも重要ではないかと思いました。たとえば「利益を上げる」という課題を解決するためには、いくつでも道筋はあります。その中で、現在自社が置かれた状況をふまえ様々な打ち手の選択肢を出し、もっとも改善感度が高いものを選び取っていくという力に他ならないでしょう。これは正にロジカルシンキングを使った問題解決と同じなのだと思いました。
肝心な数学の分かりやすさは?
一方で、そもそも本書のテーマである、「分かりやすく数学を教えてください」という観点では、何が学べたのか分からず、やや消化不良の感が残ります。著者の西成活裕先生とライターの対話形式で進んでいき、一つ一つのトピックはなんとなく分かります。ただ、「だから何?」という疑問がいつまでも残ります。そのトピックについて学んだことが、自分の数学嫌いの解消にどうつながるかが見えてこないというか。
その意味では、本書の編集においても「大局力」を意識して、全体像と、個々のパーツのつながりを1枚の図で見せるような工夫があると、より分かりやすいのではないでしょうか。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
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