ロジカルシンキングのツールピラミッド・ストラクチャ
前回も解説したとおり、筋道だって論理的なコミュニケーションの特徴は、主張と根拠を分けることにあります。この、主張と根拠を何階層か重ねて、全体として論理的整合性を保ちつつ論を組み立てるためのツールがピラミッド・ストラクチャです。
ストラクチャ(Structure)は「構造」を差す英語で、ピラミッドはその名の通りエジプトにあるピラミッドを指し、ひとつの主張が複数の根拠によって支えられている構造が、まるでピラミッドのように見えることからこの名が付きました。下記に、卑近な例ですが、「あなたを愛しています」という主張と根拠の階層構造をピラミッド型にまとめたものを示します。イメージがつかんでいただけるでしょうか。
ピラミッド・ストラクチャは「作っては壊し」
- ステップ1:論点を明らかにする
- ステップ2:情報整理の枠組みを考える
- ステップ3:根拠となる情報をグルーピングする
- ステップ4:メッセージを結晶化する
- ステップ5:チェックする
からなるものですが、ここでポイントになるのは「サイクル」になっているところ。
ピラミッド・ストラクチャはあくまでもツールですから、完成型をつくることが目的ではありません。むしろ、何度も何度もつくっては壊しをくり返すことで、より良いコミュニケーションにつなげるのが本当に役立つ使い方です。
練り込んでつくられた文章(「メッセージ」という言い方をします)をつくるわけですが、その際には「メッセージの三大チェックポイント」を意識すると、よりよいものができることになります。
ロジカルシンキングはWordでつくる
ここまで来るとお分かりいただけるかもしれませんが、実はピラミッド・ストラクチャを実務で使うためには、パワーポイントではなくWordでつくるのが便利です。
というのも、パワーポイントで一度ピラミッド・ストラクチャをつくってしまうと、その後の「つくっては壊し」のサイクルがなかなかうまくいきません。「なんとなくキレイにできたし、ま、いいか」なんて本末転倒なことが起こりがちです。そうではなく、Word(他のワープロソフトでもかまいません)のインデント機能(業の始まりが左側の余白からどのくらい離れているか)で仮想的なピラミッド・ストラクチャを表現すると、修正が簡単にできます。
実は汎用的なピラミッド・ストラクチャ
ここまでは、主にコミュニケーションのツールとしてのピラミッド・ストラクチャを解説してきましたが、実はピラミッド・ストラクチャは汎用的なツールであり、他にもさまざまな使い道があります。
- ずば抜けた「説得力」 :上司への報告、お客様へのプレゼン、他部署との調整、部下への指示
- 圧倒的な「交渉力」 :自分の論を固める「守り」と相手の弱点をつく「攻め」
- これまでにない「調整力」 :枠組みで整理して、お互いの論点を合わせる
- 思いもよらない「仮説構築力」 :まったく新しい問題にぶつかったとき、枠組みで考えて仮説を立てる
- ゆるぎない「判断力」 :メリット/デメリットを比較した上でゴーサインを出せる
まずは、コミュニケーションのツールとしてマスターして、その後さまざまな使い方を身につけていくと、よりロジカルシンキングを身につけるのに役立ちます。
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