ロジカルシンキングの研修を企画する際、「演習は、当社の業態に近いものを入れて欲しい…」というご要望をいただく場合があります。
実はこれ、講師にとっては悩ましいところで、なぜならばその会社に近い題材を扱うことは、学習上メリット・デメリットがあるから。
取り組みやすさが魅力の「近い題材」だが…
自社の業務に近い題材のメリットの方はシンプルです。受講者が行っている普段の仕事に近い題材を扱うことで、心理的なハードルが下がりロジカルシンキングに気軽に取り組めます。たとえば、営業マンを集めたロジカルシンキング研修の場合、法人向け営業を題材にした下記のような演習が考えられます。
あなたは那須高原にある会員制リゾートホテルのマーケティング担当役員です。法人需要を喚起すべく電話セールスを行おうと思っていますが、ターゲットとなる顧客選定で悩んでいます。
電話セールスはコストも手間もかかるためできるだけ効果的に行いたいのですが、法人の規模(年商や従業員数)で絞り込んだり、業種で絞り込んだりしても、今イチだと感じています。
「どのような法人に電話をして、リゾートホテルのどんなメリットをアピールすべきか」をロジックツリーで幅広く考えてください。
アイデアは出るが、それってロジカルシンキング?
演習を始めると、自身の経験にも照らし合わせ、「リゾートホテルってことは、ある程度お金がある企業がターゲットになるだろう。そうだ、決算時期が来て、利益が出そうな会社に書ければいいのでは?」のように考えて、たとえば下記のようなロジックツリーを作り始めます。
●どのような法人に電話をして、リゾートホテルのどんなメリットをアピールするか
└ 決算時期で絞る
├決算直後の会社に「来期に備えて今から」とアピールする
└決算直前の会社に「当期の節税対策に」とアピールする
そして、「節税」というキーワードを思いつくと更に発想は広がり、
●どのような法人に電話をして、リゾートホテルのどんなメリットをアピールするか
├ 決算時期で絞る
│ ├決算直後の会社に「来期に備えて今から」とアピールする
│ └決算直前の会社に「当期の節税対策に」とアピールする
└ お金で電話をかけるターゲットを絞る
├お金が余ってそうな企業に会員権の費用化による節税効果をアピールする
└お金が無さそうな企業に福利厚生費の変動費化をアピールする
のようにロジックツリーを作れる…ようにぱっと見には見えるのですが、実はこれは本当の意味でのロジカルシンキングではないと私たちは考えます。