ロジカルシンキングの研修をウェブ上でお届けする試みとして、ロジカルシンキングのロングセラー、岡田、照屋両先生のご著書「ロジカルシンキング 論理的な思考と構成のスキル」(以下、本書と呼びます)の回答例を示します。
今回はロジカルシンキング集中トレーニング4「情報を論理パターンで分かりやすく構成しよう」の中から「アルファ銀行のコールセンター」(209p)。設問と図は本書を読んでいただくとして、ヒントと回答例を示します。
ヒント1:X氏の不満を全体像を明らかにして、不満のポイントを共有するのが目的なので、用いる論理パターンは下の図のような並列型になる。
ヒント2:X氏の不満点をグルーピングして、結論を直接支えるMECEな根拠(図のレベル2)の切り口を見つける。あなた自身が問い合わせの電話をかけてから、受話器を置くまでの流れを想像しながら、X氏のコメントを読んでみよう。電話をかけてから切るまでの流れが、仮にA、Bという2つのステップに分かれるとしたら、その2ステップがレベル2の切り口になる。
ヒント3:仮に、A、Bの2ステップに分けたとしたら、ステップA、ステップBの各々について、不満点をさらにMECEを意識してグルーピングして、図のレベル3の根拠(a-1とa-2、b-1とb-2)の切り口を見つけ、a-1、a-2、b-1、b-2を観察のso What?をしてまとめる。
ヒント4:ステップA全体、また、ステップB全体では結局何が不満なのかを、レベル3の根拠(a-1とa-2、b-1とb-2)を観察のSo What?をしてまとめる。これがレベル2の根拠になる。逆に、レベル2をWhy So?の視点から見直したとき、たしかにSo What?/Why So?の関係が成り立つことを確認する。
ヒント5:ステップA全体、またステップB全体の不満(レベル2の根拠)をSo What?して結論をまとめる。また、結論をWhy So?の視点から見直すと、レベル2の根拠がその答になっていることを確認する。
ヒント2にあるとおり、「問い合わせの電話をかけてから、受話器を置くまでの流れ」を考えると、【接続】と【内容】をレベル2のグルーピングの切り口にしました。
ロジカルシンキング 基本の回答例
顧客が求める情報をスピーディーに提供するという、コールセンターに顧客が期待する機能が実現できていないのが不満である
├【接続】オペレーターと話ができるまでに時間・手間がかかるのが不満である
│├そもそも、電話がつながらないのが不満である
││└1回で電話がつながらない
│└つながってもオペレーターと話すまで時間がかかるのが不満である
│ ├コンピュータの指示で操作しなくてはならない
│ ├コンピュータの指示による操作が分かりにくい
│ └コンピュータの指示による操作が煩雑(5回)
└【内容】顧客が求める情報が的確に答えられないのが不満である
├尋ねたことに明確な、あるいはこちらのニーズをくみ取った回答がないのが不満である
│├近くの支店を聞いたとき、回答はあるがその支店の住所も電話番号も言わない
│└交通手段や支店に出向く用向きを聞かれない
└顧客情報にマッチした提案をされないのが不満である
├データベースが整備されていない
├家の購入資金について相談したのに投資信託を勧められた
└アルファとベータだったらどっちがいいと聞くと、ニーズによりますと答えられる
真の意味でのMECEとは?
上記の例を「基本の回答例」としたのは、実は他にもグルーピングの切り口があるから。仮に読み手がアルファ銀行のコールセンターの責任者で、顧客(X氏)からの不満に対策をとると考えたら、例えば【基本的なサービス】、【付加的なサービス】と言う切り口も考えられます。あるいは、より大所高所から考えるならば、X氏の不満は必ずしも全ユーザーの声を代弁しているわけではないことに気付くでしょう。すなわち、【不満を持って使い続けているユーザー(X氏)】、【不満を持って使うのをやめたユーザー】という切り口があり、こちらの方がより本質的な情報整理の枠組みかもしれません。
実はここにMECEの難しさがあり、ある前提の下ではMECEに見えたことが、より大所高所の視点からはMECEではない、と言うことがあり得ます。すなわち、上記の例で言えば、実務レベル(オペレーションレベル)で考えると【接続】【内容】がMECEに見えたのですが、マネジメントレベルでみるとこれは実は問題を的確に捉えていない(大きなモレがあった)と言うことに気付くのです。
以下、【基本的なサービス】、【付加的なサービス】と言う切り口で作成したロジックツリーの回答例を記載します。
ロジカルシンキング 応用の回答例
顧客の求める情報提供・提案をするという観点で、コールセンターの基本的なサービス、付加的なサービスの双方に対し不満である
├【基本的なサービス】顧客が求める情報プラスアルファをスピーディーに提供するという、コールセンターの基本的なサービスに不満である
│├オペレーターにつながるまで時間がかかる
││├1回で電話がつながらない
││├つながってもコンピュータの指示で操作しなくてはならない
││├コンピュータの指示による操作が分かりにくい
││└コンピュータの指示による操作が煩雑(5回)である
││
│└尋ねたことに、ニーズをくみ取った回答がされない
│ ├近くの支店を聞いたとき、回答はあるがその支店の住所も電話番号も言わない
│ └交通手段や支店に出向く用向きを聞かれない
│
└【付加的なサービス】顧客の過去の履歴と現在のニーズに合わせて商品やサービスを提案するという、コールセンターの付加的なサービスに不満である
├顧客の情報が整備されていない
│└データベースが整備されていない
│
├顧客のニーズが十分にくみ取られていない
│├(銀行の都合で)個別商品については長々と説明される
│└目的ごとに商品の特徴が説明されていない
│
├提案されない
│└アルファとベータだったらどっちがいいと聞くと、ニーズによりますと答えられる
│
└提案されてもトンチンカンな内容である
└家の購入資金について相談したのに投資信託を勧められた
※この回答例と解説はロジカルシンキング・カレッジの考えを示すものであり、本書の著者が提示した回答例ではありません。
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