メールで要件を正確に伝えるって難しいですよね。文章がダラダラ続くわりには「結局何が言いたいの?」というのが分からなかったり、こっちが意図していることが誤解されてしまったり…。
そんな悩みを解決するヒントが満載なのが、照屋先生の「ロジカル・ライティング」です。
照屋先生と言えば、岡田先生と共著の「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル
」がこの分野で「定番」とも言えるぐらい有名ですので、ご存じの方も多いでしょう。そんな照屋先生が「ライティング」すなわち文書に特化してそのノウハウを余すことなく紹介してくれています。
ロジカルではない人によって解釈の幅がある言葉
たとえば、第6章の「メッセージの日本語表現」。ここでは、典型的に陥りがちな表現上のミスを列挙して、それをどのように改善すればいいか、懇切丁寧なアドバイスがあります。1つ例を見てみましょう。
当社は、リストラクチャリングにより、真の企業価値経営おすすめている。今回設計する新人事制度は、こうした企業価値経営を促すものの一つとして MBOを導入することが大きな柱である。人事部では、各部課長の皆さんに今回の新人事体系の趣旨を十分ご理解いただくために説明会を実施する。ついては…
これを読んで、「うん」と納得してしまってはダメ。なぜならば、この文書の中には「人によって解釈に幅がある言葉」がてんこ盛りだから。たとえば、
真の企業価値経営
一見「当たり前」に聞こえますが、よく考えるとそれって何?と「分かったような、分からないような」言葉です。もしくは、ある人は「企業の時価総額」=株価を上げることと受け取り、別の人は「価値観」すなわちミッションやバリューを前面に出した経営だと受け止める人もいるかもしれません。これでは、「何が言いたかったのか」が正確に伝わらないのでダメです。
ちなみに上述の悪い例の改善案は本書164pに掲載されているのでぜひチェックしてみてください。上述の「企業価値」の話は、ちょっと難しいですけれど。
セルフエディティングのためのチェックリスト
なお、巻末には自分で自分の書いた文書をチェックするためのリストがついています。一読したあとは手元においておき、適宜このチェックリストを見直すというのが本書の「使い方」でしょう。
メッセージの組み立てについてのチェック
- 導入部の組み立て
- 文書の冒頭に導入部があり、そこで、必須要素であるテーマと読み手に期待する反応を明示してあるか
- 必須要素の他にも必要な要素があれば、それらを説明してあるか。
- テーマ設定の背景は何か
- 期待する反応を撮ってもらうことのメリットは何か
- 書き手は誰か。また、なぜ、この書き手が情報発信するのか
- 読み手は誰か。また、なぜ、この読み手に読んでほしいのか
- 本論に関する特記事項(情報源、初期提案か最終提案かなどの本論の位置付け、本論の訴求点)は何か
- テーマを、答えるべき問いに過不足なく、置き換えてあるか
- 個々の問への答をSo What? / Why So?してあるか
- 答の核である結論は何か
- 結論を直接支える根拠はいくつ、何があるのか
- 根拠はMECEにグループ分けしてあるか
- 結論を先に伝えるか、根拠から先に伝えるか、と言う順番は適切か
メッセージの表現についてのチェック
- 組み立ての視覚化
- テーマと期待する反応を示唆する標題があるか
- So What? / Why So?やMECEな関係を見て取れるか
- 見出し(小見出し)があるか
- スペース・記号を活用しているか
- 文頭で説明の切り口を明示しているか
- メッセージの日本語表現
- 具体的に表現する
- 物事の「中身」を表す
- 変化の中身
- アクションの中身
- 付帯条件の中身
- 判断基準の中身
- 物事の「中身」を表す
- 曖昧な言葉や表記方法に注意する
- ヒトによって解釈の幅がある言葉
- 体言止め
- 否定形で終わる表現に注意する
- 論理的な関係を正しく表現する
- MECEな関係を表す
- 並列するものの表記をそろえる
- 接続詞に頼らず、切り口を明示する
- So What? / Why So?の関係を表す
- 問と答の主語が合致するように表す
- エッセンスを明文化する
- 説明の力点を正しく示す
- 簡潔に表現する
- 文の作りをシンプルにする
- 主語と述語をはっきりさせ、一文を短くする
- 「…によって…」を多用しない
- 「れる・られる」を濫用しない
- 無駄な表現を削る
- 屋上屋を架さない
- 無用な強調をしない
- 具体的に表現する
画像はアマゾンさんからお借りしました。
前ページ 人を操る禁断のメンタリズム文章術を読む |
次ページ 話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!を読む |
|
---|---|---|
ロジカル・ライティングのページに戻る |
ロジカル・ライティング