話し方の基本は「モノ」から「ヒト」
いきなりですが、問題です。商談ではじめてのお客さまに会うとしましょう。いきなり要件に入るのではなくまずは雑談で相手との距離を縮めていきたいと思っています。その時、ふと相手の腕時計が目に入りました。なにやらカッコイイのでそれを話題にしようと思っています。
あなた:とても素敵な時計をされていますね
あいて:ああ、これですか、いえいえ、べつにたいしたものじゃありませんよ
さあ、このあとどうやって会話をつないだらいいでしょうか?
まずダメな例ですが、
ずいぶん高かったんじゃないですか?
どちらで買われたんですか?
どちらのブランドですか?
など、相手を「質問攻め」にしてしまうこと。これだと、
相手としては、まるで尋問をされているかのような印象を受けてしまいますし、何より質問しているほうが興味のない話題なわけですから、会話が一方に盛り上がりません。
となってしまいます。では、正解は?
あなた:とても素敵な時計をされていますね
あいて:ああ、これですか、いえいえ、べつにたいしたものじゃありませんよ
あなた:そんな、とってもお似合いですよ。何か特別な時計なんですか?
あいて:いや、お恥ずかしい話、実はずっと欲しかったものなんですが、家内が誕生日に買ってくれまして……(笑)
このように、「何か特別な時計なんですか?」と「ひと言ちょい足し」することで、実は会話が広がる話し方ができるんです。
そんなうまくいくのかなぁ…?と思うかもしれませんが、「ちょい足し」の背後にあるのは、
「モノそのもの」ではなく「モノを持っている人」に話題をフォーカスする
と言う考え方です。先ほどの例に挙げた「何か特別な時計なんですか?」で、相手の「人」の想いを問いかけていますし、これが分かってくるとさらなる「ちょい足し」ができて、
それは素晴らしい奥様ですね、うらやましいです。ご結婚されて長いんですか?
それは大切なものですね、いつ頃から目をつけられていたんですか?(笑)
などもできるようになります。
と、ここまで来ると、一口に「雑談」と言っても、意外なくらい奥深いということに気付いていただけるのではないでしょうか。それを気付かせてくれるのが安田正先生の著書、超一流の雑談力です(上記の例も本書の抜粋です)。
話し方が変わると人生が変わる
安田先生によると、雑談のレベルが上がるとこれまで想像もつかなかったような「いいこと」が起こるそう。いわく、
- 自分に対する印象や評価がガラッと変わる
- 仕事が驚くほどやりやすくなり、成果も上がる
- 苦手な人がどんどん減っていき、人間関係で悩まされなくなる
- どんな場所にも顔を出すことができるようになり、よい縁にも恵まれる
- チャンスにも恵まれるので「食うに困る」ことがない
- 表情や気持ちが明るくなってきて、人生が充実しているように感じられる
と。
オイオイオイオイ
と、ここまで読むと突っ込みたくなった人もいるかも知れません。
どっかの新興宗教じゃあるまいし、何から何までうまくいくわけで、ホントかよ。魔法の杖でもあるまいし、って。
でもね、たぶんこれ、本当だと思います。
なぜならば、本書で説明されているテクニックの数々は、ビジネスにおける話し方の本質をついているものばかりだから。
たとえば先ほどの腕時計の例でみてみましょう。実際のトークがどうこうと言うよりも、ここで注目したいのは「相手の人に興味を持つべき」というポイント。
だって、考えてもみてください。自社の商品を売りたいだけの営業マン、自分の自慢話をしたいだけの同僚…そんな「自分語り」ばかりする人とは、一緒に仕事したくないじゃないですか。
むしろ、こちらに興味を持ってくれる、もちろん営業マンだったら売りたい商品はあるのだけれど、それをキチンとこちらのメリットとして提示してくれる…。そんな人こそが雑談を通じて信頼関係を築ける人です。
そして、一見すると「当たり前」なんだけど多くの人が「できてない」行動をしっかりやろうというのが本書の真のメッセージなのです。
実際、著者の安田先生によると、優秀なビジネスマン、リピーターの多いお店の店員さん、芸能界で活躍されるタレントさんなどが実践しているそうです。
誌上セミナー:ビジネスの話し方のコツ
では、どうやって?というのが本書の次なるテーマですが、そこもまるでセミナーで語りかけるように懇切丁寧に安田先生は教えてくれます。まとめると下記をマスターできると雑談力が上がるとか。
- 声をいつもより3音くらい高くする
- 相手が聞きたいと思う話をする
- 相手の言いたいことを理解してから話す
- あいづちやうなずきのバリエーションを増やす
- 質問で上手に会話を広げる
逆に言えば、下記に心当たりがある人は、「仕事がつまらない人」という印象を周りから受けているかもしれません。
- 声が小さい、声が低い
- 話が面白くない
- 自分が話すことばかり考えている
- リアクションがない、もしくはワンパターン
- 質問をしない、質問が的はずれ
相手によって話し方を変えろ
ただ、人間っていろんなタイプがいますからね。誰に対しても同じアプローチをとるのでは不十分、というか、かえって悪印象を残してしまう場合もあるそうです。たしかに、要点をズバリと来る相手に対して、いつまでも雑談を続けていると、「いい加減、本題に入ってくれない?」となってしまうでしょう。
なので、安田先生は下記の5つのタイプに分けて傾向と対策を教えてくれています。
- 言いたいことをはっきり言う「ボス」タイプは上手に褒める
- マイルドな「いい人」タイプは意外と「危険」なので、強すぎず・弱すぎず、ギリギリの押しで接する
- 賢い話し方をする「分析家」タイプの人にはさっさとメリットを提示する
- とにかく明るい「ネアカ」な人へは楽しい話をする
- おとなしい人にはペースを合わせてゆったりと
と言うのがコツだとか。
話し方に必要な事前準備と事後の振り返り
ただ、このような雑談力は一朝一夕には身につかないですよね、当然。なので安田先生は、事前準備としてインプット、つまり雑談のネタになる話題を普段から情報収集することを薦めています。具体的に、いちばんのお勧めは「日経産業新聞」。そのココロは、「様々な業界の情報がバランスよく載っていてな二度もちょうどいいのです」、とのこと。もちろん、日経本誌は当然です。ただ、
それだけでは相手に話を合わせるくらいで精一杯でしょうから、より質の高い情報を探すときには「日経産業新聞」がおすすめです。
となります。他にも、雑誌の「プレジデント」や「日経ビジネス」、「週刊文春」、「週刊新潮」なども押さえておきたいところだそうです。
一方で、雑談後も気を抜けません。会話が終わったらすぐにメモをとるために記録用の雑談ノートをつくる必要があります。そこに、「趣味」、「年齢」、「出身地」、「家族構成」、「血液型」など、情報を記録しておくのが大事。なぜならば、そのような情報があれば、同じ人と2度目にあったときに話がスムーズに行くから。
たいていの人は1回目のコミュニケーションでせっかく距離を縮めることに成功しても、2回目でその関係性をリセットして、また初めから関係を作り直すことが多い
そうですが、それを乗り越えて、1回目より2回目、2回目より3回目と信頼関係を築き上げていくのが大切なのです。
画像はアマゾンさんからお借りしました。