ロジカルシンキング例題の回答例 (模範解答)

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本書「ロジカルシンキング」の説明

ロジカルシンキングを本で学びたいときの定番が、照屋 華子、 岡田 恵子著、ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキルです。ちなみに、著者のお二人はコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの資料を作るエキスパート。いわば、外資系コンサルタントの資料作りのノウハウが凝縮されている良書です。本書中に時々グラフやチャート(図)から「何が言えるのか」を考える例題が示されるのも、外資系コンサルの実務をベースにしているせいでしょう。

そんな本書でとくに大事なのは、第1部の「書いたり話したりする前に」というパートで、なぜロジカルシンキングが必要なのか、イヤと言うほど説明してくれます。この「なぜ」のパートを押さえていないと、テクニックをいくら読んでも身に付かないので、最も注意深く読むべきと考えます。

著者の言葉を引用するならば、

人に何かを伝えるときには、自分の言いたいことをどうまとめようか、どう話そうか、どう書こうか、などを考える前に、必ず課題(テーマ)と相手に期待する反応を確認しよう」と。

となります。

逆に言えば、ここさえ押さえれば「学びの徳大寺効果」で、テクニックは後から付いてくると言うものでしょう。

メッセージの三原則

では、さっそく中身を見てみましょう。第1章の冒頭では、「メッセージ」について詳しく解説されています。メッセージとは、主語・述語・目的語があり、整合している1つの文章ですが、単なる文章と異なるのは下記の原則を満たす必要があるという点です。

  1. 【課題】そのコミュニケーションにおいて答えるべき課題(テーマ)が明快であること
  2. 【答え】その課題やテーマに対して必要な要素を満たした答えがあること
  3. 【相手に期待する反応】そのコミュニケーションの後に、相手にどのように反応してもらいたいのか、つまり相手に期待する反応が明らかであること

「課題」に関して著者の言葉を引用すると、

「自分がいま、相手に答えるべき『課題(テーマ)』は何だろう」と自問自答してみよう。あなたの考えがどんなに素晴らしいものであっても、「課題(テーマ)」がずれていては、相手の検討の俎上に載ることすらできない。

となります。ただ、上記の言葉だけだと課題は「自分」中心になっているように聞こえるので、注意が必要です。むしろ、課題とは、「相手が何を聞きたいのか」という聞き手視点、あるいは「いま、この組織にとって何を決めるべきなのか」という組織視点で捉えると、さらにコミュニケーションが上手になれると感じました。

職場で上司から、「何が言いたいか分からない」、「結論から先に言って」と指摘される人は、課題を自分視点だけで考えてしまっている気がします。むしろ上述のように、「上司は何を聴きたいか」、「上司にとっての課題は何か」と考える方がよいでしょう。

上述のメッセージの三原則の中で、「相手に期待する反応」も本書では詳しく解説されています。それが下記の3点です。

相手に「理解」してもらう

相手に「意見や助言、判断などをフィードバックしてもらう」

相手に「行動」してもらう

これは職場の報連相と合わせて考えると理解しやすいと感じました。たとえば、上司に何かを報告することで部下自身の現状を理解してもらう、顧客とのアポイント時間を連絡することで上司に同席という行動をしてもらう、相談することで上司から助言をもらう、ということでしょう。

「そこから何が言えるか」を考えるのがロジカルシンキング

具体的なテクニックとしてはSo What?、Why So?というキーワードで、

  • 情報をグルーピングして
  • そこから何を言えるかを解釈し
  • 聞き手に分かりやすい文章を作成する

という方法論が提示されています。

これを二段階で説明しているのがこの本独自の視点で、具体的には

そこにある事象や事実のポイントを正確に説明する「観察」のSo What?と、それらの自称や事実を踏まえ、そこにある共通項やメカニズムなどを浮き彫りにする「洞察」のSo What? (94p)

となります。これは、当ロジカルシンキング・カレッジの言葉で言うならば、メッセージの結晶化の際の下限と上限と解釈してもよいでしょう。「洞察」のSo What?は、事象の裏に隠れた因果関係を見抜くことによって、聞き手を動かす文章を作ろうということです。ただ、その前提となるには事実を明確に押さえる必要があるわけで、それが「観察」のSo What?になります。

ピラミッド・ストラクチャに慣れた人には注意が必要

ちなみに著者の2段階による解説は後半でも使われていて、それが論理構成の「並列型」と「解説型」です。「並列型」は、

結論を頂点に、それを支える複数の根拠、もしくは結論が何らかのアクションを示す場合には、方法が縦方向にはSo What?/Why So?(結局どういうことなのか?/なぜそのようなことが言えるのか?)の関係で階層化されされている。一方横方向には、同一階層内にある根拠、もしくは方法が相互にMECE(もれ・重複・ずれがない)な関係で構造化されている。(141p)

となります。一方の「解説型」は、

結論を頂点に、それを支える複数の根拠が縦方向には、並列型と同じようにSo What?/Why So?の関係にある。一方、複数の根拠は常に3種類の要素があり、それらが横方向に以下の順で並んでいる。

  • 課題に対する結論を導き出すために、相手と共有しておくべき「事実」
  • 「事実」から、結論を導き出すための伝えてとしての「判断基準」
  • 「事実」を「判断基準」で判断した結果、どのように評価されるのかという「判断内容」

この3つの要素すべてが、結論に対する根拠となる。(149p)

この「解説型」、上述の通り「判断基準」と「判断内容」が事実と横並びで書かれることになるわけですが、これは世の中に広く流布しているピラミッド/ストラクチャと異なるので若干混乱するかも知れません。ピラミッド・ストラクチャになれている人にとっては、「事実」と「解釈」が横並びになっていることに違和感を感じるでしょう。さらに、「判断内容」はその上にある「結論」とほぼ同じ内容になり(たとえば、151pのLX-20の例)、これが事実と同じレイヤ(階層)にあることは重複と感じます。

したがって、とくに他の書籍や研修でピラミッド・ストラクチャに慣れている人は、少し注意深く本書を読む必要があると考えます。

ロジカルシンキングのFAQ(よくある質問)

本書の手厚いのは、巻末にFAQ、つまりよくある質問が掲載されていることです。これも、筆者のご経験から来たものだと推測しますが、仕事の現場で若手のコンサルタントなどから「どういう風に考えればいいですか?」という質問を、まとめたものなのでしょう。具体的には下記の7つです。

  1. 論理パターンというのは結局自分にとって都合のよい情報だけを見せて相手を説得しようというものではないですか
  2. コミュニケーションをするときに、結論を真っ先に伝えるというのはいかにも欧米的でペン日本のビジネスにはなじまない点と思うことも多いんですが
  3. 検討や分析を時系列で示した方が、この結論に至った根拠が、相手に分かりやすいと思い、いつもそうしています。でも店上司からはいつも結局何が言いたいんだと言われてしまいます
  4. 並列型を作る時、どのような発想でMECEの切り口を思いつけばいいのでしょう
  5. 解説型の事実には、本当に事実しか入れてはいけないのでしょうか?
  6. 解説型は、起承転結の結を先に出しただけ、というようにも見えます。解説型と起床転結の違いは何ですか
  7. 論理的に物を書いたり話たりするために、具体的にどんな練習をしたらいいのでしょうか

ご興味がある方は本書の194以降をチェックください。1点だけ注意点を挙げるとすれば、7番目の疑問に対して筆者は、

論理的にメッセージを構成する力は、訓練の量と比例してついていく

と言っていますが、これは前提として「正しいフィードバックがあれば」というのがあります。コンサルティング会社など典型ですが、上司や先輩からの厳しいダメだしがあってこそ、訓練の量と成果に質が比例します。そのような環境にない方は、まずはセミナーで学ぶところから始めるのをお勧めします。

目次

  • 第1部 書いたり話したりする前に
    • 相手に「伝える」ということ
      • 確認1:課題(テーマ)を確認する
      • 確認2:相手に期待する反応を確認する
    • 説得力のない「答え」に共通する欠陥
  • 第2部 論理的に思考を整理する技術
    • 重複・漏れ・ずれを防ぐ
    • 話の飛びをなくす
  • 第3部 論理的に構成する技術
    • So What? / Why So? とMECEで「論理」を作る
    • 論理パターンをマスターする
      • 並列型
      • 解説型
    • 論理パターンを使いこなす

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