「分かりやすい説明を出来るようになりたい…」。そう思ったときに手にとってしまうかもしれないのが鶴野充茂先生のご著書です。

「頭のいい説明「すぐできる」コツ―今日、結果が出る!

ロジカルなコミュニケーションのためには部下の意見は聞くな

ロジカルシンキングが求められるのは、職場の上司と部下の会話でしょう。その際、著者の鶴野充茂先生が提唱するのは、部下の意見は「聞くな」という、世間で言われているのとはちょっと異なることです。

一般的には、上司と部下の間では、報連相、つまり報告、連絡、相談と命解援、つまり命令・解説・援助がセットになっています。その過程では部下の意見を聞く必要があります。この逆はなぜ?という理由が、

アドバイスを提供する立場で、相手の説明を聞くとき、とくに注意しなければならないことは、「事実として、何が起こったのか」を聞くということです。

とのこと。

たしかに、部下がロジカルシンキングを身に付けていない人の場合、事実(ファクト)と意見がごっちゃになっている可能性があります。そうすると、部下の意見を聞いても上司が正しい判断を出来ない可能性もあるので、むしろ部下の意見を聞かずに、「部下が見た事実」を聞くというのは納得です。

ロジカルに伝えるための短文言い切りはサウンドバイトで

著者の鶴野充茂先生は、分かりやすい説明のためには「短い文章+短い文章」が一番聞きやすいと提唱されています。その例として挙げられているのが、NHKの大人気番組だったプロジェクトX。そのナレーションはこのような感じです。

そのとき、彼は大声を上げた。そこにあるはずの書類が消えていたのだ。さらにそのとき彼のケータイが鳴った。電話の相手は社長だった。

確かにこれならば、聞き手にとっても分かりやすいでしょう。このようなテクニックを「サウンドバイト」というそうです。これは、英語のSound biteで、要するに短いフレーズを積み重ねていくというものでしょう。

ロジカルとともに相手の気持ちに寄り添う説明

本書はメインは論理的なコミュニケーションで、そこに相手の気持ちを動かすためのネタがちりばめられています。

いろんなテクニックが詰め込まれている分全体としての整合性(cohesiveness)は弱いのですが、むしろ、どれか一つでもいいからテクニックを使ってみる、というスタンスで読むのがいいかもしれません。

たとえば、「CCメール」に即答する・しない-意外な分岐点というパート。ここでは、むやみやたらとCCを入れるのではなく、読み手の立場にたってCCやBCCを使うことの重要性が指摘されています。そして、

一般的に「話し上手」な人は「聞き上手」です。それは、メールでも同じことが言えるのです。

と締めくくられています。

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