意見を「言わない」エンジニアたち
そしてもう一つのエンジニア特有のコミュニケーションが、「意見を言わない」ということです。
たとえばあるプロジェクトに対して、ゴーサインを出すのか、それとも出せないのか。社内のシステム改定に対して予算をかけるべきか、先延ばしていいのか。
このようなビジネスにおける「決断」を避ける傾向が多くのエンジニアに共通する問題点です。
実はこれも、彼らが受けてきた理系教育にその原因があります。
理系というのは、実験などでデータを積み重ねて、その結果何が言えるかを考えるというトレーニングを、共感指導の下長い間受けます。
そうすると、必然的に、「正しいデータがなければ正しい結論が出ない」という思考になるのは当然でしょう。
結果としてビジネスの決断においても、「正しいデータがそろってないので結論が出ない」となりがち。
ロジカルシンキングで磨く仮説構築力
でも、実際のところは、ビジネスの決断は仮説です。
競合や消費者の心理も含めてすべてのデータを手に入れるのは不可能ですから、「現在分かっている情報に基づいて、最も精度が高い仮説を立てる」というマインドを持っていない限り、何ら結論を出すことはできません。
この観点で、エンジニア向けのロジカルシンキング研修では、「仮説を立てる」と言うことに重点を置いて説明するケースが多くなります。
ピラミッド・ストラクチャという方法論になりますが、これはどちらかというと「コミュニケーション」、すなわち相手にいかに伝えるか、のためのツールであると理解されています。
ところが、実際のところは、ピラミッド・ストラクチャにいは「精度の高い仮説を立てる」という側面もあります。すなわち、情報をグルーピングし、そこから何が言えるかを考える。その際には、様々なメッセージがあり得るが、その中から最も精度が高いものを選び取る。時には、異なる解釈をめぐって議論をすることで、よりお互いに対する理解が深まったり、あるいはプロジェクトの新たな突破口を発見することができる…。
研修の中でこんな経験をすると、「なるほど、精度の高い仮説を立てて、ビジネスを進めるというのはこういうことか」と、あるタイミングでピンとくるそうです。
こうなればシメたもので、もともとロジカルシンキングの素養があるエンジニアの方は、それこそ水を得た魚のように、コミュニケーションが向上していきます。